【NOMORE無断生成AI】なぜ絵描きやクリエイターは生成AIを嫌がるのか
生成AIが世に広まりだしてからあっという間に数年が経ちました。
生成AIの進歩速度は凄まじく、今では様々なサービスに組み込まれ実用化されています。
その中でもグラフィック分野、特にイラスト界隈では未だに根強い反発があり、SNSでは毎日生成AI賛成派と生成AI反対派の論争が見られます。
どうしてこんなに揉めているの?と絵を描かない人は疑問に思うかも
今回はこの問題について、絵描きサイドから見た生成AIに反発する理由や仮説を記事にまとめました。
- 生成AI賛成派だけど反対派の気持ちがよくわからない
- どちらにも属していないけれど、何が起きているのか知りたい
- 仕事に生成AIを使う場合のリスクが知りたい
このような方々の、現状把握の参考になれば幸いです。
生成AIに反発する大きな理由4つ
イラストレーターや絵師、(以下クリエイター)が生成AIに反発する背景には、大きく4つの理由があると考えられます。
- 生成AIに関する法律が整っていないため
- 生成AIモデルの学習方法とデータベースに問題があるため
- 生成AIユーザーのモラルが著しく低いため
- クリエイターのアイデンティティを揺るがす技術のため
順番に説明していきますね。
1.生成AIに関する法律がまだ整っていない

日本国において、生成AIの研究と、AIを使用して出力されたものに関しての具体的な法律はまだ整っていません。
先駆けて欧州やアメリカではガイドラインなどが締結されましたが、具体的な罰則や制裁がかかるルールはこれから適用されるという段階です。
本国でもガイドライン制定は急がれており、文化庁がAI事業者・クリエイター・一般市民を対象にパブリックコメントを募集している期間がありました。
パブコメの結果と会議の議事録は以下のサイトに掲載されています。興味のある方は目を通してみてください。
●法整備が遅い事を盾にした悪用が多い
この無法地帯を利用して、やりたい放題やってしまった業者・ユーザーがすでに存在し、その被害にあった人や問題視している人から大きなヘイトが生まれています。
法も罰則もないのでやったもん勝ち、何をされても泣き寝入りの状態で不安!ということです
イメージしてみてください。
急に泥棒が入ってきて、何かを取ったり自分に危害を加えてきたとします。
現在はそれを通報する場所も、守ってくれる機関も、裁かれる法もない状況なんです。かなり不安になりませんか?
2.学習方法とデータベースに問題がある

●データベースがブラックボックス化している
2024年、画像生成AIの一つ「ステーブル・ディフュージョン(SD)」が学習先としていたデータ収集先に、児童ポルノの画像が含まれていることがニュースになりました。
生成AIが精度の高い出力をするためには何十億という学習素材が必要です。
しかし、それらの元素材である「データセット」は、どこから持ってきているのかは公開されていない場合が多く、違法な個人ブログ・ダークウェブなど、よくない場所にもアクセスしている可能性が浮上しています。
あなたが作った生成AI画像の元データに犯罪者がアップロードした画像が含まれている可能性がある、ということです。
この危険性のあるデータセットを使ったサービスが、何の規制もなく提供され使われている現状に危機感を覚えるクリエイターが多いのです。
●作品の著作権が守られない
犯罪に抵触する危険性以外にも、全ての画像を無許可・無報酬で学習可能という状態にクリエイターは酷く憤っています。
現状、「生成AI研究の一貫としてネットに公開されている情報を学習する際、許可を取る必要はない」とされています。
研究目的で収集されるだけなら良かったのですが、これにより作られた生成AIモデルを商用展開する企業が次々に現れました。
さらに、このデータセットに特定の個人作風を学習させることで完璧に絵柄を似せた生成AIを作り出す「LoRa」という技術ができたことで、クリエイターの危機感は一気に上昇しました。
クリエイターは作品の学習を拒む権利も認められず、作品を守ることも出来ない状況に追い込まれているのです。
個人作品でもまずいのに、企業の公式画像まで勝手に学習しているので著作権やお金はどうなるの??といった疑問も
3.生成AIユーザーのモラルが著しく低い

生成AIを積極的に利用している・その活動を発信しているユーザーにモラルの低い人がとても多いのが現状です。
開発者もクリーンな利用よりもお金儲けの機会を逃さない方を重視し、クリエイターの権利や主張は無視して進んでいる状況があります。
●「技術の発展」を盾に意見を封殺しようとする生成AIユーザー(一部開発者も)
生成AIが一気に広まった頃に多くいた人達です。
- 「日本の技術発展のため」
- 「他国との技術競争に勝つため」
- 「世界全体の利益のため」
- 「障がい者や絵が描けない人の新しい創作機会だ」
こういった意見を盾に、「反発するクリエイターは古い体質」「技術発展を阻害する」などの反論を繰り返しました。
対話を試みるクリエイターの意見にはまったく耳を貸さず…。
重要なのはこれが「生成AIユーザー」であった点です。
生成AIの大手開発者サイドは、比較的双方の意見を聞いてバランスを取ろうとしているのが見られた印象でした。
職種や立場によっても意見・感情が噛み合わない状況。
生成AI推進派は技術発展にしか興味がなく、権利侵害は無視。
クリエイターは素材の権利を盾に声を上げる邪魔な存在として見られ、「クリエイター不要論」まで出る始末
●クリエイターを悪意を持って攻撃する生成AIユーザー
このような対立の激化もあったためか、クリエイターの作品を無断でAI学習に利用し、わざわざ本人に伝わるよう、悪意のあるポストをする生成AIユーザーが現れました。

引用リンク:Togetter AI生成職人「みんなも〇〇(作家名)の画風で絵を24秒で描いてskebでお金儲けしようぜ!」
また、生成AI反対の声をあげる作家に誹謗中傷のリプライを送る、嫌がらせをする生成AI推進派がSNSでは頻繁に目撃されます。
生成AIを推進したいというより、すごい技術を手に入れて浮かれている・クリエイターを苦しめることを趣旨としている利用者が一定数いる様子です。
ネットに元々いた「荒らし」「火付け職人」「絵師アンチ」にとっても素敵な道具となってしまった生成AI
●生成AIの不都合な部分を隠して広める怪しい業者
さらに、生成AIを副業・情報商材系アカウントと組み合わせる人も現れ始めました。
「生成AIを利用して簡単に大金を稼ごう!」という文句で生成AIに詳しくない人を取り込もうとしています。
単純にこういったアカウントは以前から問題でしたが、生成AIという技術を説明無しに布教している点で危険です。
利用した人に何かあっても責任は取らないでしょう。
他にも、生成AIを利用したフェイク画像や映像を流し、人々にデマを広げる人も増えています。
正直、こういった人たちがいなければもっと健全な対話が進み、生成AIへの忌避感も低かったのではないかと思います。
悪質な企業やユーザーが賛成派、反対派両方にダメージを与えている状態です
4.クリエイターのアイデンティティを揺るがす技術

反発理由の最も大きな点はこれではないか、と私は考えています。
生成AI推進派からは、「『絵描きという特権階級を失いたくないから』『個性を奪われたくないから』『仕事を失うから』反発するんだろうwww』
という嘲りがありますが、あながち間違いではないと思います。
普通に嫌じゃないですか??
努力して身につけた技術やブランド、仕事を奪われ、さらに悪用されるのって
●仕事を奪われる=生きられないことに直結
まず、生成AIの発展によって仕事を奪われることは、単純にお金を稼げなくなり生活できなくなる不安に繋がります。
クリエイターは長い時間や努力を費やして技術を確立し、その技術を売ることで生計を立てています。反発が起きるのは当然です。
歴史的に見れば、絵画が写真に、タイプライターが印刷業に、裁縫業が工業製の大規模なものになったことで職を失った人がいます。
この流れを考えれば、いずれクリエイターも一部分はそうなるとは思います。
しかし、生成AIは私達が生み出した権利物を無断で素材にし、あまつさえ模倣までも作り出します。
今までの技術シェアの移り変わりとはちょっと違うのです。
●個性を蹂躙される
クリエイターの中でも、特に絵師やイラストレーターは絵柄・個性が商品価値となります。
生成AIはこの個性だけを模倣し、成りすましてしまう問題をはらんでいます。
- 有名な絵師の最新作だと思ったら生成AIだった
- 有名なイラストレーターがこんな酷い絵を描いている!
- (実は生成AIで出力した赤の他人のもの)
- 本人に頼むとお金がかかるので、生成AIで似た絵を作ってしまおう
このような誤解を生んだり、仕事を奪う可能性を作り出してしまうことは営業妨害に繋がるでしょう。
さらに酷いことに、最近は高クオリティの絵が生成AI出力と疑われる、逆説的な風評被害まで起き始めています。
もうしっちゃかめっちゃか…
●仕事と趣味、両方の創作活動に影響がある
創作を仕事にしていない人でも、趣味として行っている人は多いはずです。
生成AIはどちらにも影響を及ぼしているため、反発が大きいと考えられます。
「AI将棋」や「AIチェス」は成立します。それは単に勝負相手としての人工知能だからです。
プレイヤーの権利や個性を侵害することはありません。
一方、絵などの創作活動は、その人の表現方法や個性が主体となり、そこに著作権も発生します。
生成AIはその表現・個性など個人が培ってきた技術の上澄みを奪い、成りすますことまでを可能にします。
そう考えると、警戒したり不快に思うのは当然のことでしょう。
まとめ
クリエイターが生成AIに拒否感を持つのには、以下の理由が考えられます。
- 法整備の遅れ
- 学習方法とデータベースの問題
- 生成AI利用者のモラルが低い問題
- クリエイターの生活やアイデンティティに関わる問題
特に法整備、データベース問題は、クリエイター活動に関わってくるため重要視している人が多いです。
モラルの低い開発者・ユーザーを取り締まれる法律ができれば…。
何かトラブルが起きた時に対応できる環境になれば、もう少し反発は収まると感じます。
ぶっちゃけ日本のコンテンツ産業を揺るがす問題でもあるので、国は早めにガイドラインを出してほしいものです。
日本のクリエイター文化を無断学習しているのは他国もそうなのですから
このブログでは、他にも生成AIに関する記事をアップしています。






