ADHDの人がミスを繰り返すのは何故?反省しないのではなく、「反省の方法」が分からないのかも
ADHDの人は、よく「反省してない」「同じミスを繰り返す」と言われます。
これは、ADHDの特性による行動や思考のパターンが原因とされていますが、「それにしても多すぎる…」と首をかしげることはないでしょうか?
もしかしたら、そのADHDさんは「反省の方法」を知らないだけかもしれません。
この記事では、ADHDの人が陥りがちな「反省」と「後悔」の混同、正しい「反省の方法」について解説していきます。
- 反省しているのに「反省が足りない」と言われる
- 謝った後どうすればいいのか分からない
- ADHDの人へどのように反省を促したらよいか分からない
このような悩みを持つ、当事者や周りの方のヒントになるかもしれません。ぜひチェックしてみて下さい。
ADHDの人が反省できないと言われる理由
同じミスを繰り返すから
ADHDの人は同じミスを繰り返してしまい、反省していないと思われることが多いです。
これは、ADHDの自己制御機能が弱いためと考えられています。
この機能が弱いと、自分の行動を振り返る際に、「どこが間違っていたのか」を論理的に分析したり、それを次の行動に生かしたりするのが難しくなるのです。
また、衝動性の強さや注意力のばらつきが「反省プロセス」を妨げる要因となります。
「反省プロセス」とは
反省プロセスとは、自分の行動を振り返り、何が問題だったのかを理解し、次にどうすれば改善できるかを考える一連の手順のことです。
具体的には以下の3ステップで進められます。
- 振り返り:自分が何をしたのか、どんな結果になったのかを思い出す
- 原因分析:その行動や結果の中で良くなかった点や失敗の原因を考える
- 改善計画:次に同じことを繰り返さないための対策を考え、実行する
反省の態度が見えないから
ADHDの人は以下のような特性から、反省の気持ちがあっても周囲に伝わりにくく、反省していないと思われることがあります。
- 感情のコントロールが難しい:
- 失敗に対して後悔や罪悪感を感じているが、それを言葉や態度で表現するのが苦手で、周囲に「反省していない」と誤解される
- 行動が衝動的:
- 衝動的な行動を取りやすく、パニックから謝るタイミングを逃すことがある。結果「謝れない」と思われてしまう
- ミスを繰り返す:
- 失敗を覚えておくことや改善策を実行するのが難しく、失敗を繰り返し、反省していないと思われてしまう
- すぐに許しを求めてしまう:
- 結果をすぐに求めがちなADHDの人は、相手がまだ反省しているか見定めている間に、もう許されたと思い込んで態度を変えてしまう
ADHDの人がミスを繰り返してしまう理由
ADHDの特性により、ワーキングメモリが弱いこと、注意力が散漫なことが同じ失敗を繰り返す主な要因です。
ワーキングメモリが弱い
ワーキングメモリとは、短期的に頭の中に情報を保持し、それを使って作業するための記憶機能です。
たとえば、「電話番号を聞いてすぐに書き留める」こと、「頭の中で計算する」ことといった日常の場面で使われます。
定型発達の人はワーキングメモリが安定しているため、短期記憶をもとにタスクをスムーズに進めることができます。
一方ADHDの人はワーキングメモリが弱いことが多く、情報を忘れたり、手順や計画が立てられない・覚えられないなどの影響が出やすいです。
これは、脳の「前頭前野」という部分の機能が低下していることが原因の一つとされています。
このことから、一度ミスをしたときその状況や原因を記憶しておくのが難しく、次の場面でまた同じ行動を取ってしまうことがあるのです。
注意力が散漫
前述の「前頭前野」は注意を集中させたり切り替えたりする役割も担っています。
ここが弱いADHDの人は刺激にも敏感で、ささいな出来事で注意が逸れてしまいます。
また、集中力とやる気に関係する神経伝達物質「ドーパミン」が不足しているという研究結果もあり、こちらも注意力の散漫さに拍車をかけています。
反省の方法を学ぶ機会が少ない
多くのADHDさんは、定型発達の子どもより沢山叱られながら育ってきたと考えられます。
絶え間なく叱責を受けるため、落ち着いて「反省」し「改善」するというサイクルが身に着けられないまま育っている可能性があります。
怒られる機会は多いがその時だけをなんとかやり過ごし、正しい反省を学んだ回数は少ない、ということです。
一般的に求められる「反省」とはどのようなものか
では、具体的に何をしたら反省したと認められるのでしょうか?
「反省」とは、自分の行動や結果を振り返り、良くなかった点を理解し改善する意欲を持つ行為です。これには他者に対する謝罪や修正行動を含む場合もあります。
一般的に、謝罪だけでなく行動の改善が伴わないと「反省がない」と見なされることが多いです。
「反省」したと認められる行動
- 自分の過ちを認める
- 誤った行動の原因を分析する
- 他者に対して謝罪する
- 行動を改善するための具体的な対策を取る
- 殊勝な態度
これらの行動を適切なタイミングで、相手に合わせて取ることが必要となりますが、ADHDの人にはそれが難しい点でもあります…。
混同されやすい「後悔」
「後悔」とは、自分の行動や結果に対して感情的に「やらなければよかった」と感じることです。
一方、「反省」はその感情に加え、次の行動に生かすための具体的な改善プロセスを含みます。
衝動的で感情のコントロールが苦手なADHDの人は、この「反省」と「後悔」を混同しやすいという問題があります。
ADHDの人は反省と後悔を混同しやすい
ADHDの人がこの2つを混同しやすいのは、以下のような理由があるからです。
- 失敗の多さから「後悔」の感情を強く感じる機会が多い
- 叱責の多さにより反省する余裕がなくなり、感情的になりやすい
- 失敗感情が強い一方、その感情を改善に繋げる考え方が苦手
- 反省後もミスを繰り返してしまうため、反省→改善の成功体験が少ない
失敗感情が強い
人よりミスの多い人生を送っているため、失敗へ過剰反応をするクセがついている可能性があります。
後悔は人の脳に強く残りやすい感情のひとつです。
そのため、失敗と後悔の方がより強く結びつき、反省へと繋がりにくい構図ができてしまいます。
成功体験の少なさ
ADHDの人は失敗からリカバリーできた体験も少ないと考えられます。
その積み重ねで、「失敗してもやり直せばよい」と考えられず、ただ後悔する感情が勝ってしまうのです。
これらのことから、反省ではなく「感情的な後悔」で終わってしまうことが多く、2つを混同してしまうようになります。
心がけるとよい「正しい反省」ステップ
ADHDの人は失敗した際の行動をテンプレートとして覚えておくとよいでしょう。
「反省プロセス」と一部被る部分もありますが、具体的には以下の手順が効果的です。
- 失敗を認める
- 謝罪する
- 振り返り・原因を分析する
- 改善策を立てる
- 協力を求める
- 改善策を実行する
- 改善策が上手く行っているか振り返る
失敗を認める
まずはミスがあったことを素直に受け入れましょう。
反射的に感情的にならず、指摘されたミスを現状報告として淡々と受け入れるのがコツです。
謝罪する
他者への影響があれば真摯に謝りましょう。
稀に、「え!自分のせい!?」と思う事態もあるかもしれませんが、謝罪することで一旦自分と相手の感情を落ち着かせることも重要です。
振り返り・原因を分析する
なぜ失敗したのかを具体的に考えます。
注意すべき点は、ここで「後悔」の感情に引っ張られないことです。
- 何が起きたのか
- 自分が何をして、それがどんな結果になったのか
- その行動や結果の良くなかった点はなにか
- 失敗につながったポイント
などを冷静に分析しましょう。
改善策を立てる
次に同じミスをしないための対策を考えます。
対策は具体的かつ、自分が実行できるものを考えましょう。
過去に同じミスをした人の報告書や事例があれば、その時の対策方法を参考にするのも有効です。
協力を求める
必要に応じて周囲のサポートを受けましょう。
ADHDの人は元々コミュニケーションが苦手だったり、失敗への後ろめたさから一人で抱え込んでしまう方が多いです。
しかし、ミスをリカバリーすることが最優先ですので、勇気を出して周りに頼ることも考えましょう。
改善策が上手く行ったか振り返る
改善策を実行した後、再度振り返りを行うことをおすすめします。
実際に失敗を防げるようになったか、別の問題点がないかなど、改善策を強化することができます。
会社などの組織であれば、ミスを指摘してくれた人に自分の行動が上手く行っているか確認を取ってみることも有効です。
まとめ
ADHDの人は、その特性が反省や改善を難しくする要因になることがあります。
しかし、本人が具体的な反省のステップを知ることや、周囲が協力の手を差し伸べることで少しずつ失敗を乗り越えていくことができます。
- 「後悔」ではなく「反省」を心がける
- 今していることが「後悔」に寄っていないか冷静に分析する
- 正しい反省ステップを踏襲する
この3点を頭に入れておくだけでも、ミスへの取り組み方の意識が変わるはずです。
この記事がADHD当事者の方や、周りの方の役に立てば幸いです。