ADHD

ADHDはデザイナーに向いているって本当?実際に働いていた当事者の感想

ADHDとデザイナーのイメージ

適職診断やキャリアカウンセリングでは、ADHDに向いている職業としてデザイナーがあげられることが多いです。

しかし、本当にそうなの?と疑問に思ったことはないでしょうか。

この記事では、実際にADHDを持つデザイナーとして10年間働いていた私・むのが、疑問について所感をまとめています。

デザイン業界を目指して、勉強や転職活動をしている方の参考になれば幸いです。

なお、ここに書いてある内容は一個人の所感です。条件に当てはまるからその仕事ができる・できないという訳ではないので、参考程度にご覧ください。

ADHDはデザイナーに向いている?

結論:その人の障害特性による・他の職業よりは働きやすい

結論から書きますと、「向き不向きはその人の障害特性による」「他の職業よりは働きやすい」です。

個人的にデザイナーはおすすめの職業だと思っています。

ADHDであることを過剰に気にせず働くことができるからです。

ADHDにデザイナーが向いている理由 2つ

向いていると考える理由は2つあります。

  1. 仕事内容と特性の相性が良い
  2. 特性を受け入れてもらえる環境が多い
むの
むの
順番に説明していきますね。

その1. 仕事内容と障害特性の相性が良い

ADHDの主な特性は「不注意・多動性・衝動性」の3症状です。

この他に、「過集中」「こだわりが強い」といったASD的な症状をあわせ持つ人も多いと言われます。

これらの症状によってミスが起きやすいため、マイナスに見られがちですが、デザイン分野ではプラスに働く場面が多いです

脳のイメージ

不注意・多動性・衝動性→ひらめき・行動力・好奇心の素になる

この特性は、デザイン作業の「アイディア出し」や「試行錯誤」でプラスに働きます。

気になる物事にすぐに飛びつき、入手した体験や知識は、あとでデザインや企画のネタにできるからです。

また、思いついたことをすぐにやるという行動力も、試行錯誤の段階で役立ちます。「とりあえず作ってみよう!」という思い切りの良さがあるのが良いところです。

アイディアやひらめきをキッチリした書類・作業工程に落とし込む作業はやや苦手ですが、自分流のワークフローを身につけたり、誰かのサポートを受けることでカバーできます。

むの
むの
アイディアを形に落とし込む作業は経験と慣れです。先輩に聞いたり、自分で試しながら良いフローが作れていくと思いますよ

こだわり・過集中→専門性につながる

この特性は自分の専門分野を作ることに役立ちます。

得意分野があるというのは、業界で働く上で武器になります。のめり込むほど好き・得意というジャンルがあれば、その分野で食べて行けることも。

「このデザインは○○さんが得意(専門)だから頼もう」という風になったら良い感じですね。

過集中の特性は短期集中が必要な作業で力を発揮します。

デザイン業界は締切が短い仕事も多いため、一気にやりきれる力は便利です。

※注意※ 特性が合わないデザイン分野もある

ADHD特性のうち、「不注意」があまり合わないデザイン分野があります。

出版・印刷物関連、工業製品のデザインなど、精密で正確な作業を求められる分野です。

これらのデザインは小さなミスが大きなトラブルにつながる可能性が高いためです。

出版であれば、誤字脱字の見逃しが回収騒ぎになる。工業分野では、数値の間違えで製品が正しく完成しないなどが起こりえます。

この方面を目指す場合、特性をカバーするための工夫を頑張る必要があると感じます。

むの
むの
他のデザイン分野でも、デザイン+プログラミングといった細かい作業が絡んでくると辛く感じるかもしれません。

私もデザイン画像をプログラムに組み込む工程は苦手でした…

その2. 特性を受け入れてもらえる環境が多い

多様性のあるオフィスのイメージ

デザイン業界は比較的ADHDが働きやすい場所が多いと感じます。

理由として、

  • さまざまな雇用形態がある
  • 就業時間が柔軟(裁量労働制、フレックス制など)
  • 就業スタイルが柔軟(在宅勤務可など)
  • 成果の出し方、目標がわかりやすい
  • ミスをリカバリーしやすい
  • ADHD・ASDっぽい同僚が多い

などがあげられます。

さまざまな雇用形態

正社員・契約社員・派遣・フリーランスなど、自分の仕事スタイルに合う雇用形態を選ぶことができます

私の同僚には、正社員が担当するマネジメント業務が不得意なため、わざわざ契約社員を選んでデザイン業務に集中するという人もいました。

さらに、近頃は副業やダブルワークを認めている会社もあります。そういった会社に入り、特性を発揮した副業を行うのも一つの案だと思います。

むの
むの
私は3ヶ月更新の契約社員として数年間働いたことがあります。

ボーナスや退職金が出ない、更新されるか契約満了前はヒヤヒヤするなどデメリットはありましたが、ほとんど正社員と同じ扱いで不満は少なかったです。

派遣や契約社員で入社し、正社員を目指すというルートを置いているデザイン会社も多いです。

柔軟な就業時間

デザイン業界は始業時間が遅めの会社が多いです。

遅刻しやすいADHDの人は、急なトラブルでギリギリになっても間に合うため助かると思います。

出社後の時間の使い方も柔軟な会社が多く、好きな時に小休憩を取ったり、ランチに出かけたりすることができます。

裁量労働制・フレックス制をとっている会社もあり、自分が一番集中できる時間帯だけ出勤することも可能です。

柔軟な就業スタイル

一般企業よりも働く際の自由度が高いです。

  • ファッションが自由
  • 仕事中の飲食が自由
  • 音楽が聴ける・逆に耳栓ができる
  • 仕事中にスマホを触れる

などなど、個人が集中できる環境を作れる職場が多いです。(※許される範囲ですが)

最近は在宅勤務を認めてくれるところもありますよ。

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成果の出し方・目標がわかりやすい

ゴールが見えやすいイメージ

仕事の評価が一般企業に比べてわかりやすいと感じます。

評価については「期限内に適切に完成させる」「クオリティの高いものを作る」というような、明確なゴールがあります。

業務目標も漠然としたスローガンではなく、「◯◯◯の効率化」「月当たりの受注を増やす」など、達成ラインがイメージしやすいものです。そのため、曖昧な物事が苦手はADHDには助かります

特定スキルを身につける・業務ができるようになると昇格するというふうに、キャリアアップの道筋もわかりやすいです。

ミスのリカバリーができる

ミスを完全に無くせないADHDは、ミスをしない工夫も大事ですが、した後の対処が重要です。

医療職などいっさいのミスが許されない職業と違い、デザイン職はミスをリカバリーができる場合が多いです。

もしも間違ったデザインを作ってしまっても、徹夜で対応して間に合わせたり… まあなんとかはなります。

デザイナーの対応後は、営業・企画・依頼者などチェックをする人が必ずいるので、見逃しミスも発生しにくい環境です。

むの
むの
私もこのタイプですが、「とにかく失敗が怖い!」というADHDの人にはIT・WEB系デザイナーをおすすめします。

理由は「成果物をすぐに確認できる」「ミスをアップデート更新などで直せる」からです。

世に出たらそこで終わり、という物よりはプレッシャーが少ないと思います。

同じような特性を持つ同僚が多い

デザイナーには、自分と同じような特性があるのかな?と感じる人が多い印象です。

単に個性が強いだけかもしれませんが、一般企業の方よりこだわりがあり、独特な人がいます。

実際、同僚にADHD持ちの人が何人かいました。特性を生かしバリバリ仕事をするタイプや、遅刻が多いけど仕事は真面目という人など、様子はいろいろでした。

定型の人の中では浮いてしまう自分が、逆に無個性で普通の部類になる場合さえあります。

ADHDがデザイナーとして働くために必要な条件

チェックリストのイメージ

ADHDにとって比較的働きやすいデザイン職ですが、必要なものが欠けていると辛くなるかもしれません。

それは下のような特徴・条件です。

  1. デザインの仕事に興味がある
  2. 仕事に必要なスキルを自主的に勉強できる
  3. ほどほどの体力と健康がある
  4. 人に話しかける勇気がある

 

デザインに興味がある・自主的に学べる

デザインの仕事に興味がある」「自主的に勉強できる」は必須条件です。これはADHDの人も定型の人も同じです。

興味の対象が「デザインを作ること」「見ること」だったり、「デザインで稼ぎたい」でも問題はありません。興味があればモチベーションが保たれ、長く仕事を続けられます。

また、デザイン業界は常に流行や技術が変わっていく世界です。

自分から学ばず、誰かから教えてもらうのを待つだけでは、いつか着いていけなくなってしまいます。そのため、自主性もとても大切な条件です。

ほどほどの体力と健康

デザイン業界はデスクワークが中心で、頭をとにかく使います。1日座り続けるための体力、考え続ける集中力は必要です。

体育会系のような丈夫な体、無限の体力まではいりませんが、最低限デスクワークがこなせる体調を維持できるようにしましょう。

ADHDの人はすでに二次障害で体調を崩していたり、崩しやすい状況だとは思います。そのような人は無理をせず、体調の回復を優先した方が安全です。

人に話しかける勇気がある

コミュ力が高く、誰とでも話せて仲良くなれる人気者になる必要はありません。ただ、仕事のやり取り・質問・協議などはできることが必要です。

デザイナーは仕事上さまざまな方とやりとりが発生します。一人で黙々と作業するのは一つの面です。

一番少ないときは自分とお客様の1対1。多くなると複数社の合同チームで5、60人規模など。

「すみません、◯◯について確認しても良いですか?」

この一言が言えるか、言えずに自己完結してしまうかがミスの防止にも繋がります。こういうのは苦手だという人も、勇気を出していきましょう。

まとめ

以上のことから、「向き不向きはその人の障害特性による」が「他の職業よりは働きやすい」というのが私の考えです。

適職診断は統計に基づいているので参考になります。しかし、不特定多数が受けるもので個人に寄り添った結果は出てきません。

大事なのは、自分の障害特性が業界に合っているかじっくり分析すること。その上で仕事を選ぶことです。

自分の特性を見極める

ADHDの自己分析は、何が得意・不得意かの他に、どこまでが障害特性か・そうでないかを見極めることも大切です。

障害から来る困りごとと、二次障害からくる症状が混ざっていることがあるからです。

障害自体は完治できませんが、それ以外の症状や癖は、薬や工夫で対処することが可能です。

凸部分を伸ばしつつ凹部分をカバーできれば、相性が難しいデザイン分野にも挑戦できる可能性があります。

 

このブログでは、ADHDの自己分析に役立つ本やYoutube動画の紹介もしています。良かったら目を通してみてください。

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