ADHDの大きな悩みの一つに、「頭の中がうるさい」というものがあります。
具体的な症状は以下のようなことです。
- 頭の中がざわざわする
- 考えがごちゃごちゃして、分からなくなる
- 同じ音楽がずっと流れ続ける
- 脳内で勝手に独り言をはじめる
- 空想や連想が止まらなくなる
- 思考が止まらなくなる
- ぼーっとする、いわゆる「無」になる時間がない
このような脳内の雑音に悩まされている人は多いのではないでしょうか?
この記事では、頭の中がうるさい原因と、実際に試して効果のあった対策を紹介します。
静かな生活を取り戻すヒントになれば幸いです。
なぜADHDの頭の中はうるさいのか
ADHDの人がこのような状態になりやすいのには、3つの理由があります。
- 脳内が多動だから
- 感覚過敏だから
- 情報の取捨選択が下手だから
順番に解説していきます。
脳内が多動だから
ADHDの多動性は大人になるにつれて落ち着いていくと言われます。
しかし、これは目に見える行動面のことで、頭の中の多動は残り続ける傾向があります。
行動面は、日々の経験から学び改善することができますが、脳内の動きは無意識に起こるため制御が難しいのです。
感覚過敏だから
最近の研究では、ADHDの人は脳の「前頭前野」の働きが弱いと言われています。
前頭前野は注意・思考・判断などをつかさどる部分で、刺激に対しての反応をコントロールしています。
ADHDの人はこの部分が人より弱く、刺激を適切に処理できず敏感に感じ取ってしまいます。そのため、反射的・衝動的に様々な思考が起きてしまうのです。
この他、ASDの性質を強く持っていて、ADHDとは別に刺激に過敏すぎる場合もあります。
情報の取捨選択が下手だから
前述した感覚過敏に共通する点ですが、前頭前野の働きが弱いと情報の取捨選択をする判断が苦手になります。
これは「ワーキングメモリが少ない」という言葉で説明されることも多いでしょう。
脳に入った情報を整理整頓できないため、常に詰め込み続けてパンク状態になります。
今何を覚えておけば良いか、何を忘れても良いかの判断ができないので、全部覚えておこうとしてしまうのです。
頭の中がうるさいデメリット
一番のデメリットは、集中が阻害されミスを連発してしまうことです。
集中して物事を考えたり、考えをまとめることが困難になります。
また、会話中にも常に考えが浮かんでしまうため、話をしっかり聞けない・理解できないという問題も発生するでしょう。
「同じ音楽がずっと流れ続ける」、俗に言うイヤーワームが起きると高いストレスを感じる上、睡眠不足にもつながります。
頭の中がうるさい・思考が止まらない時の対策
では、このような状態の人はどういった対策をすれば良いのでしょうか?
以下に、私が実際に試して効果のあった対策方法を紹介していきたいと思います。使える場所やタイミング、即効性などが異なるため、適宜使い分けてください。
ADHD専用の治療薬を使う
最も効果的だったのは投薬治療です。
ADHDの薬は脳の神経物質に直接効果を与えるため、意志の力に頼らず最速で結果が出ます。「頭の中がざわざわする」「考えがごちゃつく」という症状は早くに改善しました。
具体的な変化はこちらの記事で書いていますので、興味のある方は読んでみてください。
私が服用した薬はコンサータというものです。他にも何種類かあるので、医師と相談の上自分に合う薬を選ぶと良いでしょう。
カフェイン飲料を飲む・飲まない
ADHDの人はカフェインによって注意力の向上、記憶力が改善される可能性があるという研究が発表されています。(医学誌「Nutrients」より)
まだ研究段階である上、多動性・衝動性には逆効果になるかもしれないという反論もある研究です。
しかし実際、私もコーヒーや紅茶を飲んだ後は集中力が上がり、頭の中の雑音が減っている感覚があります。
カフェイン飲料を飲める人は試してみても良いかもしれません。
注意点として、カフェインには摂取量の上限があります。それを大幅に越えたり、元々弱い人は具合が悪くなることがありますので、慎重に行ってください。
逆に、カフェインをとることで興奮状態となり、脳内の多動が悪化してしまう人もいます。
自分がどちらのタイプか、飲んだ時と飲まない時を比較して判断するのが良いでしょう。
身体を動かす
頭の中がざわざわしている時、体はそこまで動いていないことに気づきました。
むしろ、体が動かせない状況になると頭の中が多動になる感じです。
そんな時は体を動かしてみます。会社のトイレや階段でストレッチをしたり、軽く足踏みを繰り返したり。
仕事や勉強の前に、軽めの息が上がるような運動をすることも効果的でした。朝やお昼の散歩はオススメです。
好きなことを「10分だけ」する
短時間だけ何かに一気に集中すると、脳内の騒がしさが落ち着きました。
私の場合はスマホゲームです。
対戦型のゲームで1試合10分程度で終わるため、1回だけ行います。すると、ゲームの内容に意識が向いて脳内のざわざわが消えてくれます。
特に趣味がない人や仕事先の場合は、外の空気を吸ってみたり、ペットとたわむれてみたり、植物の手入れをしたりするのも良いでしょう。
ただ、10分より長く行うと今度はそちらに夢中になってしまいます。気を逸らす程度に行うのがポイントです。
物理的に刺激を遮断する
以下のような行動を制限することで、脳に入る刺激を減らせます。
- SNS・動画サイトなど、無限に情報が出続けるものを見ない
- 耳栓やノイズキャンセリングイヤホンをする(音楽は聞かない)
- 作業をする場所の周りに関係ないものを置かない
ネット・スマホを見ない
インターネットはADHDにとって一番悪影響があると感じます。特にSNSは大敵です!
刺激に反応しやすいADHDの脳は無限に画面をスクロールし、新しい話題を見つけようとします。
そして、得た情報を頭の中で反芻し続けるため、それが脳内の雑音となるのです。
心を鬼にして画面を閉じるか、難しい場合は下のような拡張機能を使うと良いでしょう。強制的にWEBページを使用禁止にしてくれます。
GoogleChromeに導入し、見たくないサイトを登録することで強制的に画面表示をブロックします。
ネットやスマホの刺激による脳への影響を、知識として知っておくことも効果的です。
こちらの本は、ネットの刺激と脳の動きについてとても詳しく、わかりやすく書かれています。
ADHDの特性にも深く関係することが書いてあるので、ぜひ読んでみてほしい1冊です。
音を遮断する
音を遮断することも効果的です。
環境音や人の話し声が刺激のきっかけになることも多いため、何も聞こえないようにしてしまいましょう。
耳栓やノイズキャンセリング機能のついたイヤホンが便利です。
目の前を片付ける
作業をする時、余分な情報が目に入らないようにすることも効果があります。
特に、今からする作業と関係ない物がある場合はしまいましょう。別の用事に関する物が目に入ると、気になった脳内で優先順位が乱れ始めてしまうからです。
忘れそうで心配な場合はリマインダーを設定し、予定を知らせてもらいましょう。
合わせ技・感覚遮断タイムを作る
耳栓+アイマスクを装備し、横になって5分ほどじっとします。
すると、雑念を呼び起こす刺激がないため頭の中のざわつきが治まっていきます。
外出先など横になれない場所では、耳栓をして目を閉じるだけでも十分効果があります。
「ジャーナリング」をする
これは思い浮かんだこと、頭に詰まった考えを外に出す作業で、「ジャーナリング」と呼ばれます。
情報整理や、物事を客観的に見たい時に役立つ手法です。
- B5〜A4サイズのノートを用意する
- 3ページ分、ひたすら思い浮かんだことを書き続ける
- 言葉遣い、誤字脱字、文脈などは考えなくて良い
- 寝起きや寝る間際に行うのがベスト
- 邪魔が入らない場所で始める
書くことがもうない、と思うまで書き続けます。
そうしていくと、覚えておこうとした情報が紙の上に残るため、過剰に暗記しようと働いていた脳が落ち着いてきます。
仕事中にしたい時は、ノートの端や付箋などに書くのが良いでしょう。私は仕事用ノートの余白にジャーナリングをしていました。
何か適当な雑誌・本を音読をする
家にいる時や周りに人がいない場所であれば、活字を声に出して読むことも効き目がありました。読む+発声に集中するため頭の中から気が逸れます。
さらに良いことに、音読は前頭葉の活動を高める効果があります。日常的に続けることで、ワーキングメモリも鍛えられるそうですよ。
睡眠をしっかりとる
睡眠不足は脳の動作に一番影響します。とにもかくにも、睡眠時間はしっかりと確保しましょう。
脳は寝ている間に情報の整理を行います。同時に、脳の神経の修復も行います。睡眠時間を削ってしまうということは、脳がごちゃごちゃのまま翌日を迎えるということです。
寝る前に興奮しやすいゲームやTVを見る、スマホのブルーライトを眺めるなどは控えた方が良い睡眠をとることができます。
夜更かしをしやすいADHDの人は意識して寝るようにしてください。
まとめ
ADHDの人の脳は元々刺激に反応しやすく、常に脳内が騒がしくなるという特徴があります。
自分だけが異常だと思い詰めず、他のADHDの人も同じように悩んでいるということを知って貰えたら幸いです。
また、定型発達の人も極度に忙しい時や悩みが深い時は同じ状態になります。
脳の反応の一つなんだととらえて、自分に合った対処法を探していきましょう。
他にも、脳の動きや機能について気になるという人は以下の記事で紹介している本もオススメです。
ADHDの対策本として、障害特性がどのように起こるのか脳の動きと合わせて解説されています。
以上が、頭の中がうるさい原因と、実際に試して効果のあった対策でした。